「酵母エキス」はその機能性成分がβグルカンであることから、実質的にはβグルカン健康食品の一種とできます。「菌」と呼ぶと不衛生な印象が拭えない食品を「酵母」と呼ぶことで体に良い食品との印象操作ですね。
ここで、「エキス」と聞くと水分が豊富な果実から果汁を搾り出すかのような好印象を受けます。しかし、総じて10ミクロン前後と微小な酵母を物理的に絞れるわけはなく、酵母エキスを称する健康食品で絞りるような製法は皆無です。実際には「
酵母エキス」を抽出するためには、化学的な手法を用います。酸やアルカリ、酵素を利用して、酵母の中に含まれている機能性成分を取り出すのです。酵母の体内から不必要な部分は残して、必要な部分(成分)だけを抽出された物質はまさに「酵母エキス」と呼ぶに相応しいでしょう。
この「
酵母エキス」と呼ばれる健康食品には、「黒酵母エキス」の宣伝が顕著ですが、その他には、「ビール酵母エキス」、「
パン酵母エキス」=パン酵母βグルカンなどが一般に発売されています。これらの酵母エキス健康食品に共通している機能性成分は、多糖類の一種
βグルカンです。つまり、原料や製法は異なっていても最終的な製品の中に主目的であるはずの成分βグルカンがどれだけ多く抽出されたかによって酵母エキスの製品の優劣が決されることになります。言い換えると如何なる原料と製法を用いても、製品の中に
βグルカンが少ないようでは、粗悪なβグルカンとしか言えないということです。
さて、この
βグルカンを黒酵母を原料として製造する場合には、酵母を培養することで酵母菌の体の外周にゼリー状にできるβグルカンを利用します。この酵母菌の培養液を
βグルカン水溶液として回収し、殺菌消毒すること黒酵母エキスが完成するわけです。黒酵母エキスに特徴的なのは、濃縮や精製工程は除外されているために、βグルカン純度が非常に低いことでしょう。最終製品としての黒酵母エキス=黒酵母βグルカンに含まれている
βグルカンは非常に少なく0.5〜2%前後です。それでも
βグルカンの含有量が0.5%増えるごとに価格も階段状に高くなるのが黒酵母エキス健康食品の特徴です。
このようなに、原料に黒酵母を用いてその培養液から製造する工程から、黒酵母エキスは製品名として黒酵母培養液や
黒酵母βグルカンとも呼ばれているのです。
一方、パン酵母を原料として
βグルカンを抽出する場合には、
酵母の体内の奥深くにある細胞壁という部位を取り出す必要があります。この酵母菌の体内深い細胞壁はβグルカンそのもので構成されているため、非常に
純度が高い60〜85%のβグルカンが抽出できるのです。パン酵母はその名のとおり、パンの製造にも用いられる食用の酵母なので安心ですが、酵母の細胞壁の前にはマンナン質という硬い殻で覆われているために、そのまま食したのでは
βグルカンが体内へ吸収されません。そこで酵母表面のマンナン質という殻を取り除き、酵母の中の「細胞壁」という部位からβグルカンを抽出する必要があるのです。この抽出工程が複雑かつ時間を要することが、
パン酵母エキス=パン酵母βグルカンが高価である原因とされています。
黒酵母エキスの製造のように培養液を煮沸消毒するだけの簡略な工程であれば、その分費用も安価に抑えられるはずなのですが、
黒酵母エキス=
黒酵母βグルカンの価格は非常に高いのは不可思議な現象です。
βグルカンの含有量として比べるとさらにその差は拡大してしまいます。
一方のパン酵母βグルカンでは、最終的な
βグルカン精製純度を上げることに特化しているために精製工程が非常に複雑です。そのために品質は高く、
βグルカン純度は60〜85%が実現されているものの、価格までも相応に高価となってしまっています。日本の販売店では
米国産の良質のパン酵母βグルカンは、
60粒入り1本が5万円を超える超高級サプリメントになっているのです。
しかし、
βグルカンは継続して摂取することに意味のある健康食品なので、これだけの高額費用を払い続けられる人は少ない、もしくは経済的に非常に無理をして購入されているのでした。ところが、高価なはずの
パン酵母βグルカンは、本場の欧米では60〜100ドル(7000〜12000円)程度で数多く販売されているのが実態です。日本の5分の1の価格です。もちろん1本が100ドル前後となるサプリメントは米国でさえも高級サプリメントとされているようですが、この価格差は不条理以外の何者でもありません。、日本でのパン酵母βグルカンは高過ぎたのです。
これまでの日本での
パン酵母βグルカンは、知る人ぞ知る高級サプリメントでした。しかし、近年の健康ブームから日本でもパン酵母βグルカンが知られるようになり、今では、品質も価格も米国並みの優れた
パン酵母βグルカンを日本で安価に入手することも可能です。
酵母エキスの選び方としては、共通する機能性成分であるβグルカンの
量と質と価格を比較するあります。今のところパン酵母βグルカンが、βグルカンの量と質で突出して良質であり、
安価なパン酵母βグルカンならば最良の選択とできるでしょう。